カルサの姿になってからは朝起きてすぐに鏡で自分の姿を見つめることを日課としてきた。

自分はサルスパペルトではない、カルサなのだと納得してから部屋を出る。

日中も極力は鏡で自分の姿を確認して自己暗示のようなものをかけていたのだ。

自分はカルサ・トルナスだ、この国を治める国王だと何度も言い聞かせていた。

そのうち何もしなくても自分がカルサであることを疑わなくなり、本来の自分を失いかけたところで彼女が名前を呼んだのだ。

「私にもお手伝いをさせて下さい。サルスパペルト殿下。」

あの時の声は今でも耳の中に残って確かに響く。

数えてみると日数はさほど経ってはいなかったことにサルスは恐ろしくなった。

懸命に築いてきた今までの自分を僅か数日で失うところだったのだ、その不安定な心の揺れは今なお続く。

手を握っては開き、まるで自分自身が生きているを確かめるように見つめていた。

「何が本当か分からないな。」

苦笑いで呟いた言葉には全て含まれていた。

自分で選んだ道なのだと分かっていても難しい、頭に気持ちが付いていかない、そんな自分に嫌気がさしていた。