カルサが執務室に戻るとサルスが書類を確認しながら働いていた。

何も言わずカルサは扉を開けて中に入り席につく。

「おかえり、大臣はなんと?」

「くだらない話だ。よほど俺が気に入らないらしい。」

背もたれに身体を預けてため息を吐くのは手慣れたものだった。

髪をかきあげ浮かない表情をしている。

これは機嫌が悪かったり落ち着かない時によく見せる仕草だ。

「本当にいい話じゃないようだな。」

「だから言ったろ?くだらない話だと。」

勢い良く立ち上がり堅苦しい上着を脱ぎ捨てたかと思うと、そのまま外に続く扉へ向かった。

「どこか行くのか?」

「リュナの所に。」

答えたときにはもう扉は閉まっていた。

不思議に思いながらもカルサを見送り再び仕事に戻ろうとする。

しかし、ふいにガラスに映った自分の姿に心臓が強く跳ねた。

長く付き合ってきた自分の姿なのに驚いてしまうことが情けない、しかしそれには理由があるのだ。