「は、話すって、なにを…」









「符和ちゃん、今日は部活なんてないよ。」

















あ…

ためすって、そういうことか。



「…」



「ただの忘れんぼじゃないよね?


符和ちゃん、記憶力はいいって俊に言ったんでしょ?」


「はい…あの」


「放課後。


部室きて。



そこで全部聞くよ。」




「先輩…ありがとう、ございます。」



わたしは軽く一礼をして、その場を去った。



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───…



放課後、わたしは言われたとおり部室に向かった。


すると、先輩はすでにいすに座っている。



「良かった…来てくれて。」


「え?」


「無理矢理だったから、きてくれないかと思った。」


「そんな、無理矢理なんて…!」


「…座ろっか。」


「…はい。」




なにから話せば、いいのかな。


わたしが迷っていると、先輩から話をきりだしてくれた。



「最近、記憶力が低下してるのはなんで?」


「…先輩、最初に言っておきます。

このことは、だれにも言わないでください。


…一ノ瀬先輩には、特に…。


それから、今からわたしが話すことを聞いても、わたしは部活を続けたいです。

部活をやめろ、なんて言わないでください。

それを約束してもらわなければ…

いくら先輩でも、話せません。」



「分かった。

絶対約束する。」



…先輩が優しい人で、良かった。



「東先輩…わたし、病気なんです。」



わたしは笑いながら言った。

だって、こんな暗い話したら先輩まで暗いムードになっちゃうし、

わたしよりつらい人なんかいっぱいいるんだから。


だから、暗い顔なんかしない。


だから、泣かない。



「符和ちゃんそれ、ホントなの…!?」


先輩は、ガタッと勢い良く席を立った。




「はい、本当です。

若年性アルツハイマーという病気で…」


「じゃあ、符和ちゃん全部忘れちゃうの…?」


「はい、残念ながら…」


わたしがはにかみながら言うと、先輩はポロポロと涙を流した。


「えぇ!?


先輩、泣かないでください~!!」



「ご、ごめん…一番つらいのは符和ちゃんなのに…」


違う。



一番つらいのは…


「一番つらいのは、忘れられる側ですよ。」


「ふ、ぅ…っ」


「先輩、泣かないでください。

わたしは大丈夫です!

こんな病気なんかに負けませんよ!!

東先輩の事だって、忘れる訳ないです!」



「符和ちゃん…無理して笑わなくても」


「無理じゃないですって!!

わたし本当に、病気なんかにまけませんから!!」


明るく、そういって見せた。