「あー…別に。



…頭上げれば?」



そう言われ、ゆっくりと上げる。

しかし、先輩の顔を見るのが怖くて俯いてしまった。



気まずい雰囲気の中、「帰るか。」と言う先輩の声で、わたしたちは会場に戻っていった。




それから、会場に戻り、みんなに謝った。




でもやっぱり、なぜ忘れたのかはわからずじまいだった。



そもそも、自分の歌詞を忘れるなんて、絶対なかった。



ホントに、どうしちゃったんだろ。




「ただいまー」


「あら、符和おかえりー!!」


「符ー和ー!!パパ寂しかったぞー!!」


んな大袈裟な…


うちの家族はお母さん、お父さん、弟、わたしの四人家族だ。



「あ、ねーちゃんお帰り!!

今日こそ教えてもらうからね、ピアノ!!」



弟は、毎日わたしにピアノを教えてくれとせがんでくる。


わたしよりピアノがうまいのに。


「わたしより斗羽(towa)の方が上手でしょ。」


斗羽は、小学校三年生なのに、数多くのコンテストや試験で賞を取っている。


その影響か、わたしも少しピアノが弾けるのだ。


「オレねーちゃんのピアノあったかくてすき!!


教えなくていいから弾いてー!!」


「はいはい、あとでね。」



「あーら!!

ダメよ、お母さんも聞きたいー!!」


「なにー!?

パパが先だぞ!!!」



そんなこんなで、今日も始まった『誰が最初にわたしのピアノを聞くか』というくだらない喧嘩。




わたしは、そんな喧嘩が大好きだった。