「じゃあ、まず自己紹介から始めようかな。
私は隣の病室に入院してる山中幸未。
高1って言っても学校には行ってないに等しいけど。
本とバラエティー番組が好き。
廉くんは?」


私は笑顔で問いかけた。


「若津廉。中2。
サッカー部だった」


「そっかー
あ、“だった”って事はもうやらないの?」


しまった。
地雷を踏んだん気がする…


「こんな体で出来るかよっ」


予想通り廉くんはさっきよりも大きな声で反発した。

彼の病気は心筋症って伊藤さんが言ってた。
運動をしちゃいけない。

でも、治療をすれば治る可能性が高い。


「もう大好きなサッカーだって体育の授業だって出来ない。
こんな気持ち分かる訳ないだろ?!」


廉くんは備え付けのテーブルをバンッと叩いた。


「わかるよ。
でも私は廉くんが羨ましい」


「は?」


羨ましい。
治る見込みのある廉くんが羨ましい。

私はいつ死ぬかわからない体だから。


「私…」


「もう、出てけよ」


病気の事を話そうと思ったけど彼の言葉によって遮られてしまった。