「何ですか?」


「隣の病室に一昨日から中学生の男の子が入院してきたんだけどね。
なんか病気のショックとかで全然元気なくて治療が進まないのよ…」


そう言って伊藤さんは苦笑した。


「幸未ちゃん、話聞いてあげてくれないかな?」


伊藤さんは“お願い”と更に付け足した。


「いいですよ。私に出来ることがあるなら」


私は笑顔で返した。


その日の午後、私は隣の病室へと足を運んだ。

部屋は個室でベッドには短髪の男の子が横たわっていた。

確か名前は…


「若津廉(ワカツレン)くん、だよね?」


私が問いかけると廉くんはこちらをゆっくりと振り向いた。


「そうですけど…」


「私ね、廉くんと友達になりたいんだ。
これからよろしくね?」


私が手を差し出すと廉くんはゆっくりと私の手を握った。

冷たい手。

そして今、改めて彼の顔が見れた。

冷めた瞳と笑みが見えない口元。


まるで病気が分かった時の私みたいだった。