明らかに、語尾にはハートマークが付くのを感じた担任の甘い言葉。


反射的に、女らしからぬ声を出してしまった。



そして、ドッと沸き上がる生徒たちの笑い声。


「杏子遅刻しすぎー！」
「宿題だってー」
「げってなんだよ、げって！」


そんな、野次を飛ばす周りの観衆達に、本気で怒りを感じた。







「もー最悪！」


「最悪って、しょうがないじゃん。杏子、遅刻の常習犯だし」



そういって、担任から渡された何十枚の「川田へ」と書かれた宿題プリントをパラパラと見るのは。

３年生になってから仲良くなった、前田千夏。


呼び名は、千夏。
そのまんまだ。



そして、今は１時間目終わりの休み時間。


"―１時間目終わったら、職員室に来るように―"

そう指摘され、渋々職員室に行ったら、満面の笑みでこれを渡された。



「…ひどい…ひど過ぎる…」


しかも。
"明日までにやってこい"
と、丁寧に期限付きで。


「鬼だ…。」