あたしはくるりと体を反転させ
山下大貴があるであろう教室へと目を向けた。


「‥。」

たしかに彼は教室にいた


しかも、シュンと仲良く喋っている。


───ドキン


あぁ、だめだ。
あたしもう重症。

山下大貴以外目に入らない。


一瞬でこんなにどっぷりはまるもの?


「‥‥。」


考えようにも頭が動かないこのあたしは、
「──な、菜々子に相談しなきゃっ!」

一気に踵を返し
菜々子の元へと急ぐことになる。




だけど、あたしはただ好きなだけで
願わくば付き合えたらな〜って軽い気持ちで。

あの出来事がなかったら
あたしはこんなに怖くて、辛くて、悲しくて。
一生忘れられない高校時代を送ることにならなかったと思う。

やっといま──
あなたはあたしの中で思い出の人になりました。山下くん。