美帆ちゃんは俺に気が付くと、とことこと俺の傍にやって来た。
「なに?」
そんな美帆ちゃんに、俺は申し訳ないフリをしながら言う。
「…ごめん。週末にしてた約束、あれダメになった」
俺がそう言うと、美帆ちゃんは「えぇー」って残念そうな顔をする。
「何でよ…」
「ちょっと都合悪くて」
俺の言葉に美帆ちゃんはしばらく考え込むと、言った。
「…好きなコでも出来た?」
「!」
急にそんなことを聞かれるもんだから、俺はガラにもなくちょっと慌ててしまう。
「そ、そんなんじゃないよ。ただ本当に都合が…」
「うっそだ~。顔に書いてあるよ。“好きな人が出来たから、あんたを抱けませーん”って」
「!」
え、何で?何でバレてんの!?
俺はそう思いつつも、ため息混じりで言った。
「…美帆ちゃんに隠し事は出来ないな」
本当、何でか知らないけどいっつもバレちゃう。
だから、美帆ちゃんにだけははっきり言った。
「あのね、友希の彼女を好きになっちゃったの」
「え、」
「…だから、抱けない。ごめん」
俺はそう言うと、美帆ちゃんにバイバイをして自分の教室に戻った。