「ありがとうございます、」



あたしが笑顔でそう言うと、星河先輩は右手の人差指で自分の頬をポリポリと掻きながら言う。



「べ、別に…お礼なんていらないけどさ、」



そう言って、照れたようにあたしから視線を外すと、まだ平均台に座ったままの菊池先輩に言った。



「…ほら菊池君。帰ろ、」

「!」



星河先輩はそう言うと、先に倉庫を出る。

そんな星河先輩に続いてあたしもそこから出た直後、振り向くと中にいる菊池先輩と一瞬だけ目が合ったような気がした。

だけど菊池先輩は慌ててあたしから視線を逸らすと、星河先輩に言う。



「せっかくなんだから、二人で帰りなよ」

「え、」

「一応君ら付き合ってんだから、仲良く二人だけで帰ったら?」



菊池先輩はそう言うと、悪戯にニッコリ笑った。

でもそんなことを言われた星河先輩は、慌てたようにして菊池先輩に言う。



「や、ふ、二人だけとかそんなっ…。確かに付き合ってはいるけど、そんなはっきり言われたら照れるじゃん!」

「へ、」

「まだ俺ら付き合ったばっかりだし、そんなの知らないもん。



ね?茉友ちゃん!」



「え!?」



二人の会話をなんとなく聞いていたら、突然そんなふうに星河先輩があたしに話を振ってくるから、あたしはビックリしながらも頷いた。



「…そ、そうですね」