「もー俺、茉友ちゃんに本格的に嫌われたのかと思って焦ったよ、」
菊池先輩はそう言うと、本当に安心したような顔をしてあたしから視線を外す。
そうかと思えばまたあたしに視線を戻して、言った。
「あのね、茉友ちゃん」
「?」
「俺は、茉友ちゃんが思ってる以上に茉友ちゃんのことが好きなんだよ」
「!」
「だから、緊張してる茉友ちゃんも可愛いって思うし、うまく喋れない方が茉友ちゃんらしくて好きだし…だから、何だろうな…。
とにかく、俺はどんな茉友ちゃんでも大好きだし、そんな茉友ちゃんと一緒にいるから嬉しいの、」
「!!」
菊池先輩のその言葉に、あたしの中で固まっていた心が一気にほどかれる。
そしてあたしがやっと顔を上げて菊池先輩を見ると、菊池先輩は柔らかく微笑んで言葉を続けた。
「だから、あんまり自分を責めたりしないでよ。茉友ちゃんは今のままがいいんだから」
そう言って菊池先輩はあたしの手を握ると、嬉しくて安心の涙を流すあたしに「観覧車乗るよ」と言ってそこに向かった。
「っ…はい、」
菊池先輩の優しい言葉が、優しい手が、温もりが、全てあたしを包み込んでくれる。
こんなに愛のある言葉、男の人に初めて言われた。
…完全にターゲットじゃない菊池先輩の言動に、あたしは観覧車の中で先輩に言った。
「…菊池先輩、」
「うん?」
「あたし、菊池先輩と一緒にいたいです」
「え、」
菊池先輩はさっきから窓の外を見ていたけど、あたしがそう言うと、ビックリしたようにあたしを見た。
だけどその表情はすぐに笑顔に変わって…
「ほんと?」
そう聞いてくる菊池先輩に、あたしは思い切って頷く。
「本当です、」