「で、何?」




俺がそう思っていると、菊池君が問いかけてくる。

そんな菊池君に、俺は一息つくと思い切って言った。




「…菊池君」

「うん?」

「この前…茉友ちゃんの服、見てくれたんだって?」




俺がそう聞くと、ほんの一瞬だけ、菊池君の表情が固まった気がした。

だけどそれはすぐにほどけて、菊池君はいつもの笑顔を見せる。




「あ、あぁ…だって茉友ちゃん何かブティックの前で困ってたから。
思わず声かけちゃったんだよ」

「…困ってた?」

「うん。何かね、デートに着ていく服がわからないんだって。
店にも入りづらそうにしてたし…。そんな姿見たら、ほっとくわけにいかないじゃん?」




菊池君はそう言うと、今度は申し訳なさそうな顔をして俺を見た。


…菊池君は、ほんと女の子に優しいのな。


そう思いながら「…そうなんだ」って呟くと、菊池君がまた口を開いて聞いてきた。




「ってか、それがどうかした?茉友ちゃんと何かあったの?え、俺のせい?」




そう言って、ちょっと不安そうにする。

…表情は出てるのに相変わらず読めない菊池君のそれに、俺は顔を背けて言った。




「いや…そんなわけじゃなくて、」

「じゃ何、」

「…」




俺が黙っていると、菊池君がボソッと言う。




「はっきり言っちゃいなよ、へたれ友希」