「菊池先輩って、結構ファッションとか詳しいんですね。女の子の服のこととか、
あたしより知ってる感じだったし…」
「…」
「それに、星河先輩に似合ってるって言ってもらえたので安心しました」
そう言ってやっと星河先輩を見ると、星河先輩は何故か黙ったままちょっと俯いていた。
あれ…?もしかして、聞いてなかったかな?
そう思ってもう一回名前を口にしようとしたら、それを遮るように星河先輩が言った。
「…菊池君と、二人だけ、だったの?」
「え、」
星河先輩は途切れ途切れにそう言うと、チラ、とあたしを見る。
「そ、そうですけど…」
その問いかけにあたしはそう頷いたけど、慌てて星河先輩に言った。
「あっ、だ、大丈夫ですよ!
この前の倉庫でのことなら菊池先輩はちゃんと謝ってくださいましたし、
もう二度としないって誓ってましたから!」
「…ほんと?」
「ほんとです!」
「…なら、いいけど」
「?」
星河先輩は口ではそう言うけど、あたしの気のせいなのかなんなのか、表情はまだ少し曇ったまま変わらない。
あー、やっぱり仲良くさせてもらってると言えど、菊池先輩と二人きりってのはマズかったのかな…。
あたしが内心そう反省していると、やがて星河先輩がその場から立ち上がって言った。
「…ちょっと行ってくる」
「え、あのっ…」
「茉友ちゃんはここで待ってて」
「…はい」
…トイレかな?
だけど星河先輩は、そのまま3時間くらい部屋に戻ってこなかった。