ん?


悪くない、って、何?ケーキのこと?



星河先輩の言葉に困惑しながらも、とりあえずあたしも星河先輩に続いて家の中に入る。


…あ、親の人とかいるよね。挨拶ってしておいた方がいいのかな。


あたしがそう思いながらキョロキョロしていると、星河先輩は奥の部屋のドアを開けながらあたしに言った。




「茉友ちゃん、こっち」

「あ、はい」




…あそこの部屋に親の人がいるんだろうか。


そう思いながらその部屋に入ってみたけど、そこには星河先輩の親らしき人は見当たらなかった。


…っていうかここ、もしかして星河先輩の部屋!?



あたしがそう思ってちょっとびっくりしていると、星河先輩が「ちょっと散らかってるけど、適当に座りなよ」って言う。




「…はい、」




確かに、ちょっと(というか、かなり)散らかっている星河先輩の部屋。

部屋の隅に漫画が積み上げてあったり(ちゃんと本棚があるのに)、

制服が床に無造作に脱ぎ捨ててあったり、

Tシャツとかフェースタオルが数枚ソファーの上に適当に置かれてある。


あたしは星河先輩に言われた通りその辺の床に座ると、さっきのケーキを星河先輩に差し出して言った。




「あ、これ、一緒に食べましょ?」

「何これ?」

「ケーキです」



あたしがそう言うと、星河先輩は受け取ろうとしていた手をゆっくりひっこめながら言う。



「…ごめん、俺甘いものはちょっと…」