ア、アリガトウ?



って、言ったの!?佐伯さんが、このあたしに!?



そう言われた直後はちょっと信じられなかったけど、どうやら佐伯さんのその様子だとその言葉は本当らしい。

あたしが思わずビックリしていると、佐伯さんが言葉を続けて言った。



「べ、別にお礼なんて、あんただからいいかなぁって思ったんだけど、昨日あたしが助かったのは、みんなは夏野のおかげだって言うから…」

「え、あ、あたしのですか…?」



…う、嘘だぁ。


あたしが半信半疑で聞いていると、それに気づいたらしい佐伯さんがまた口を開いて言う。



「言っとくけど、嘘じゃないからね。昨日、高井がトイレで水をかけられた後、あんた突然先生を呼んだじゃない、」

「!」




“せ、せんせー!イジメです!イジメが発生してます!助けてくださいっ!!”



「…」



そういえば、そんなことも言ってた気が…。

でも、それがどうしたんだろう…?


あたしがそう疑問に思っていたら、佐伯さんが言った。




「あんたのあの声のおかげで、みんなは“ここでイジメが発生してる!”ってわかってそこに来れたらしいの」

「!…え、」

「つまり、あんたのおかげで問題が解決したのよ」



佐伯さんはそう言うと、あたしに向かって初めて純粋な笑顔を向けた。



「だから、ありがとね」