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翌日。
昼休みに教室で本を読んでいると、
そこへ佐伯さんが話しかけてきた。
「夏野、ちょっと来なさい」
「あ、はい…?」
佐伯さんはあたしにそう言うと、教室を出て階段を上がって行く。
…何処に行くんだろう?
そう疑問に思うけど、あたしは何も言わずに黙って佐伯さんについて行った。
佐伯さんは、昨日のあのトイレでの出来事から今日の今まで、全くイジメられていない。
佐伯さんをイジメていた女子達はおとなしくなったし、
それに何より他の女子達が佐伯さんとツルむようになったから、これからもイジメが発生することはきっとないのだ。
…よかった。平和だ。(ただしあたしは役立たずだったけど)
あたしが独りそう思っていると、やがて佐伯さんが立ち止まった。
どうやら目的の場所に到着したらしい。
そして誰もいない屋上に上がると、佐伯さんがあたしに言った。
「…夏野、」
「は、はい?」
佐伯さんはあたしの名前を呟くと、くるりとあたしの方を向く。
すると、意外な言葉を口にした。
「…昨日、ありがとう」
「!!」
佐伯さんはそう言うと、照れくさそうにあたしから視線を外す。