着信を拒否っちゃうと後が怖いんだけど、今のこの空間は誰にも邪魔されたくないから仕方ない。
…帰りにコンビニで、俺の奢りで新発売のスイーツ買って帰ろ。
そう思っていると数分後に茉友ちゃんが試着室から出てきて、その服を購入すると俺達はブティックを後にした。
茉友 side
「では、ありがとうございました、菊池先輩」
「いえいえ、」
ブティックを出た後、あたしは菊池先輩に家まで送ってもらってしまった。
…今更だけど、彼氏いるのにこういうの大丈夫なんだろうか。
あたしがそう思ってちょっと反省していると、菊池先輩が言う。
「…デート、楽しんどいでよ」
「はいっ」
…やっぱ優しいな、菊池先輩。
そう思いながら家に入ろうとしたら、ふいに後ろからそんなあたしを菊池先輩が呼び止めた。
「あ、茉友ちゃん!」
「…はい?」
その声にあたしが振り向くと、菊池先輩が言う。
「また、いつでも相談してきていいから」
「!」
「遠慮しないで、友希のこととか…何でも聞きにおいで?」
菊池先輩はあたしにそう言うと、優しくニッコリ笑った。
だけど一瞬、菊池先輩の表情が歪んだ気がしたのは、
いったいどんな意味を表していたのか…。
あたしがそれを知ることになるのは、まだまだ先の話のこと…。