菊池先輩 side
茉友ちゃんがそう言った瞬間、俺は一瞬ブティックに入ろうとする足を止めた。
「…そ、そうなんだ」
って、人生初めてのデートが家っていきなりレベル高くない?
…まぁ、どーせそれって友希の提案なんだろうけど。
俺は自然とこみ上げてくる複雑な想いを、無理矢理心の奥にしまい込むと茉友ちゃんに言った。
「じゃあ、ラフな格好の方がいいね。家デートなら」
「そう、なんですか」
だけど、あー何だろ。何かすげー嫌。
友希の家なんて行くなよな。
アイツ、結構部屋散らかってんぞ。
なんて、心の中で囁きながら茉友ちゃんと一緒に服を選ぶ。
「茉友ちゃんさ、私服でショートパンツとか穿く?」
「い、いえ。私服はいつもジーパンしか穿かなくて…」
「あ、そうなんだ」
俺はそう言って、目の前にあった紺色のショートパンツを手に取って、それを茉友ちゃんにあてた。
「!!」
「…あ、俺これ好きかも」
だけどそう言った途端、茉友ちゃんは顔を真っ赤にして言う。
「み、みみ短くないですか?これ!」
「え、そう?」
そして恥ずかしそうにそう言って、茉友ちゃんはそのショートパンツを俺から奪うと、元あった場所に戻した。
あー、可愛かったのに。