父はジュエリーの会社を経営しているため、涼は当然の如く父の会社に就職をした。
就職難の中羨ましい話ではあるが、後継ぎというプレッシャーを考えるとどうなのかな…






「ただいまー。」





「莉紗、おかえり。」





「あれっ、お兄ちゃん1人?」





リビングには兄の姿しかなかった。







「父さんと母さん、結婚記念日だから遅くなるってさ。」





「そうだったね!デートかぁ~、仲良くていいね。」






嬉しそうに微笑む莉紗に、涼は切り出した。






「俺さ、そろそろ1人暮らししようかと思ってるんだけど。」






「えっ?急に…どうしたの?」






あからさまに寂しい顔になった莉紗に、涼は戸惑いを見せながらも答えた。






「俺ももう社会人だし。家出てもいいかなって。」






外はザーッと強い雨が降り始めている。
そして空がゴロゴロと鳴ると、雷が落ちた。