「これから電車乗るの?」




お水をくれた彼が尋ねた。




「いえ…ここの駅だから…」





「歩ける?」





「大丈夫です…」





そう言って立ち上がった瞬間、すぐによろけた。
そしてすぐさま彼に支えられた。







「全然大丈夫じゃないな。家どこ?送ってくよ。」





「えぇっ!?結構です……」




初対面の男性に送ってもらうだなんて、とんでもない。
やはり優しさと見せかけたナンパ男なのか。





「わかった。じゃあタクシー乗り場まで。乗っちゃえば帰れるだろ?」




そう言い終わるやいなや、莉紗の身体がふわっと浮いた。





(……えっ………?)






彼は軽々と抱き上げると歩き出した。
いわゆるお姫様抱っこである。





その瞬間、莉紗の酔いが少し覚めかけた。






「ちょっ!ちょっとちょっと、降ろして!!」




「大丈夫だって。」




「全然大丈夫じゃないー!きゃっ、どこ触ってんのよぉぉ…!」




「あんたが暴れるからだろ。危ないから大人しくしてろって。」






そんな二人のやり取りを周りは変な目でジロジロ見ていた。
こんな公衆の面前で知らない男に抱えられて……恥ずかしすぎて隠れたい…