春うららのこの良き日。



満開の桜の木の下で………



























 











「うりゃ!!」



両手が宙を舞い、パシンと音を響かせる。




「ちっ、取れないか…」













春のこの良き日。



桜の木の下で、





私は………花びらキャッチをしていた。











乙女たち(クラスの女子)に聞いたんだ。




『散ってくる桜の花びらを、地面に着く前に取れると、

自分の恋が成就するんだって~』



と……。




 






別に、そんな迷信に頼る程成就させたい恋をしている訳では無い。


好きな人なんて高校に入学して一年、全くできなかった。





















…………ごめん、見え張った。











『良いな~』と思った人は居たけど………













………ごめん、また見え張った。











私にはがっつり、見つけるとずっと目で追ってしまう人がいます。






 








しかし、昨日2年になって奇跡的に同じクラスになれたけど、


1年の時は違うクラスで、

彼は1年の時から女子の話題となっていた人。




まず入学式そうそう、

『カッコイイ人が居るって~』

と噂され始め、


1週間立てば学校中に彼の存在が知れ渡った。



それと同時に彼の周りには、『彼女立候補します!』と名乗りを上げる女子が日替わりで引っ付き。




休み時間は必要以上に彼に近づく綺麗な女子。



帰りも日替わり定食の様に違う女の人と帰って、


噂ではそのまま頂いているとか………





しかし特定の彼女を作らないという事は、

『遊び相手は良いけど、彼女とかめんどい』
って言うタイプなのだろう。




実際に彼女面してくる子や告ってくる子は片っ端から振っているらしい。








 






しかもそれが学校でも結構なベッピンさんばかりだから、



こんな見ているだけの平凡女子なんて、




迷信か占いか魔術に頼るしかない。





むしろ頼っても無駄なのだ。








「ふんぐぁ!!」






狙いを定めて手を伸ばす。




パチンと音を立てた手のひらを開けてみると………











「おっ!桜の花びらゲットだぜ!」






そこには『痛いよ』と言ってそうなくらいペチョンペチョンになった白い花びらが………







迷信とか主旨を忘れて、
取れたことに満足していると………





「ぷっ」


と後ろから噴き出した声。




 





見られた事が恥ずかしく、

バッと振り返ればその人物を目で捕える。




捕えた瞬間に今度は目を大きく見開いた。




何故かさっきの一連の行動を隠したくなって、

手のひらに乗せていた花びらを手の中に隠してそちらに向き直る。







手には汗。


顔にも、身体の見えない部分にも汗。




なんて声を上げたらいいのかなんてわからなかった。






だって、目の前に居たのは、




私が1年間ただ見ていた人………三神 流星(みかみ りゅうせい)君だったから。