「……ったくほんと面倒くせぇな。あんた」


麻衣は驚いて横に立っている龍之介を見た。
その声は明らか莉奈に届くように言っている。


「あんた、前に東京来たときとなんも変わってないんだな。変にアイツの姉ぶったりして。
ひとつも…ひとつもアイツの気持ち考えてないだろ?本当は知ってくるくせにさ」


「な、何言ってんの片桐っ…」
麻衣の制止も聞かず、龍之介は続ける。まるで、片桐が黙っていることに耐えられなかったみたいに。


「知ってて泳がせるって、あんたほんと酷な女だな。向き合うこともさせて貰えないなら…あいつにとってあんたと会うのはただツラいだけなんだよ」





片桐…






「もう会うつもりないなら、マジで会わないで…あいつのためにも」


片桐の言葉を聞いて、莉奈はゆっくりと何かを整理するように目を閉じると頷いた。
そして、少しだけ笑った。



「……うん、その通り。私って最低よ」


「莉奈さん…」


「姉弟だもん。向き合える訳ないでしょ?私が例え、特別に想っていてもそれは出来ない」





莉奈さんと話したあの日。
いつもより苦いカフェラテを飲んだあの日。
莉奈さんはカイトとの関係を話してくれた。
大切で、尊敬できる父親の選んだ女性の息子…カイトを守ることが亡くなった二人に自分に出来ることだと。





「だったら…ちゃんと突き放してやれよ。それが出来ないならあいつときちんと向き合ってくれ」



龍之介の言葉に、莉奈はただ困った笑みを浮べていた。



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