ハッと振り返ると、笑うカイト。
片桐も顔を隠してるが肩が揺れるくらい我慢している。


「ちょっ、なに二人とも」


「いやっ…麻衣ちゃん、水族館好きとは言ってたけど詳しすぎだろ…くくっ」

「え?!私そんな変だった?!」


「まるで図鑑見てきた子供みたいだな」


あながち片桐のツッコミは間違ってない。
振り返れば、私が子供で香織がお母さんみたいなやりとりだった。
香織も手を叩いて笑う。

いつもだったらこっ恥ずかしい気持ちになってたけど今日は特別。
なんとなくみんなで笑えてることにホッとした。


一番大きな水槽のところへ来ると、まるで自分が泳いで入ってる自由な気分になる。



「…どうですか、故郷の光景は」

「…こ、故郷?」

ふいに聞かれた片桐の言葉に考える。
水族館に…"故郷"?
記憶を辿ると蘇る、"アンコウ"の4文字。
途端に顔が曇る麻衣を見て、片桐は身構えた。
構えたから、お構いなしにひっぱたく。


「いつまで覚えてんのよそれ!ムカつくっ」

「第一印象がそれだったからしょうがないよ」
片桐はなんの悪気もなくあっけらかんと言う。
その言い方は最初に会ったときとなんら変わらない。


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