こうして小一時間かけて、水族館に着いた。
水族館なんて久しぶり。
確か…元カレと行った以来だろうか。










ふんわり香水の匂いを漂わせる香織から離れるように片桐は前を歩こうとした。
だけど香織はある程度距離が出来ると、コツコツヒールを鳴らして距離を縮める、それの繰り返しだ。
無愛想、だけど端整な顔立ちは香織を飽きさせない。

麻衣が言ってた、"顔はイケメン"のお隣さん。
……予想以上だ。





「水族館なんて、デートでこうゆうところ来たことないんだよねー」

「で、デート?」

「そう、デート。だって男と女2人ずつってデートみたいじゃない?」

「別に俺は誘われただけだし」

「だって見てあの二人。すごいいい感じじゃないですか?」

香織は片桐の肩をツンツン指で突くと、前の二人を指さす。
さっきまで後ろにいた二人がいつの間にか前にいる。
1つのパンフレットを二人で広げ、それにカイトが何か言ったのか、麻衣は笑いながらカイトの肩を叩く。


確かに、仲の良い光景だ。



「……龍之介くん?」


「……………」



そのうちカイトはあたりを見回した。
同時に麻衣も見回し、パッと目が合う。


「あ、いたいた!二人ともこっちだよ」



麻衣が手招きすると、カイトも無邪気に笑いかけてきた。



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