「…なに?」

「え?」

「人の顔じっと見て」

「あっ、いや、別に…」
ただ、見入ってしまっただけ。
こんなに格好いい人なかなかいないと思ってたから。




「…なんかアンコウみたいで変だったよ」

「ア、アンコウ…?」

「うん、魚の。つーか、アンタからぶつかってきたから割れたコレ、弁償しなくていいよね?俺は止まってアンタが出るの待ってただけだし」

そう言って彼は花びらの破片をヒラヒラと目の前に翳した。


「あ、は…はい。そうですね…」

「気を付けて歩けよ、アンコウちゃん」




ア、アンコウ…?(二回目)



その男は立ち上がるとお店の中に入っていった。その姿を呆然と見ていたけど、しばらく経って"アンコウみたい"発言が失礼極まりないことに気付く。
自分の顔が魚顔って思ったことはあるけど!
整った顔立ちの見知らぬ人に言われた怒りは当たり所がなく、悶々とした怒りをしばらく抱えることになった。


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