おばさんはそう強く言いながらも、面白がってカイトのおしりをペシペシ叩いた。


「いてて！分かりましたってば！おばさんほんと強いなぁ」

カイトは目を擦ってほうきを手に取った。


「麻衣ちゃんも、龍之介くんも分かったわね？」

ジロリと目を光らせるおばさんの指令に拒否権はない。片桐も私も苦笑で頷き、仕方なく3人とも個々の予定を調節してからさっさと掃除をすることにした。


すっかり秋になり、銀杏の葉が沢山散ってそれがまた黄色いじゅうたんみたいになっている。
ため息を吐きながらし始めた掃除も、直接肌に感じる秋を楽しみながらいつの間にか鼻唄なんか歌ったりしていた。


「下手くそ」



ぼそっと聞こえた声に振り向くと玄関担当の片桐がゴミ袋を片手に歩いてきた。
鼻唄に上手いも下手もあるか！って思ったけど、ツンとした顔で気にしないフリをした。



「…酒やめたの？」

「え？」

「あんた、酒やめるって言ってなかったっけ？」

「あぁ…うん。最近飲んでないよ。仕事もだんだん忙しくなってきたし」

秋に入れば冬に向けた先取りネイルをする人が増えてくるのだ。帰ればクタクタ。飲みになんて行けない。
……まぁ、あの日のことも引きずってるけど。


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