「わぁ~ピンク可愛い~!ゴールドと合いますね」

「ここにゴールドのスタッズ置いたりすると…ちょっと大人っぽくなって素敵ですよ」


華奢な指先がキラキラ眩しく光っている。
外は小雪が舞い始めて、いかにもホワイトクリスマス。
初めてネイルをする20歳のお客様は、最初緊張していたものの出来上がりを見て序々に笑顔が増えていく。


「今日はこの後どこにか行かれるんですか?」

「あ…はい、彼氏と…」

「あ~いいですね♪イヴですもんね」

「初めて過ごすので…いつもより可愛くいたいなって思って」

「素敵です…その気持ちが大事だと思います」

「来て良かったです。ほんとに可愛くしてもらえてありがとうございます!」

「素敵な日をお過ごしください。ありがとうございます」



白いふわふわのコートを靡かせ、彼女は笑顔でお店を出た。
その後姿を窓から見ながら、頬が緩んだ。
あんな幸せそうに笑ってくれると本当に頑張れる。
この仕事で良かったな、ってそう思える。



”ちょっとでも可愛くいたいなって思って”


麻衣は自分の手を見た。
こないだの事件でボロボロ、仕方ないとは思っているけど。


ああゆう気持ち、大切だよね…





麻衣はマスクを外すと、小さめの化粧ポーチをかばんから取り出し鏡の前に立った。
ほぼすっぴんに近い自分の顔。
休みの日、ちょっと遠くまで遊びにいくときにしかしないメイクをし始めた。