冷静を保った瞳がカイトを映す。
こうゆうときに周りの音が聞こえなくなるのは不思議だ。
声だけが耳に入って鮮明に届く。
冷たい風が頬をつついたときハッとした。




「そっかーだからかー」


「……?」


「麻衣ちゃんが俺のお誘いに、返事躊躇ってたの」

「会ったのか?あいつに」

「うん。麻衣ちゃんには莉奈のことで色々迷惑かけたし」

「カイトさ…」

「莉奈とはもうちゃんとした。ちゃんとした姉弟。一緒に過ごして、気付いたんだよ。
話しても、一緒にメシ食っても、どっか出掛けても、寝ても…お互いの距離は変わらなかった」


「………」


「血が繋がってなくても家族になれるもんなんだな…こんな歳になって思い知らされたわ。ははっ」

「そっか、」

「麻衣ちゃんが向き合うキッカケ作ってくれただから正直言うとさ、」

「…………」




「いま、思ったより動揺してんだけど。二人が付き合ったとか」


「…………」


「いや、麻衣ちゃん取られたー!!とか、負けたー!!とか、そんなんじゃないから。うん、ただ、なんかちょっと寂しいだけ~」


カイトは笑うと、龍之介の肩をポンと叩いた。
思いの外強かったのか、龍之介はウッと小さく声がでた。


「引き留めて悪いな。仕事頑張れ!今日はイヴだぞ!!激しすぎない程度にな♡なんちゃって♪」


そう言って、呆然とする龍之介を置いてさっさと部屋に入ってしまった。










「はぁ………」

一週間も空けた部屋はすっかり薄暗く冷え切っていた。
カイトは部屋の中、そのまま壁にもたれ掛かり大きく深呼吸をした。



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