あたしの答えは一つしかない。


「仁、まだ子供。本当に守れる?」


希ちゃんが、心配そうに見守る中、顔色を変えず、ただ真っ直ぐに見つめ、頷く仁。



「最初から賛成よ。部屋はあたしがオールセキュリティシステムのマンションを用意する。家賃はいらない。食費と光熱費は仁が払うのよ」



話はOKしたというのに、今度は希ちゃんまでも真剣な顔になり、二人揃って


「「ありがとうございます!!!」」


なんて言うから、よっぽど覚悟して家に来たんだな、と思った。



っというか、もともとそういう時のために、部屋は用意してあるのだけど。


それは、今日が終わってからのサプライズにしよう。



「さーて、若いのは出てった出てった!ラブラブな夜へいってらー」



手をつないで「お邪魔しました」という声を背中に、部屋の片付けを始めた。


仁が、溺愛ね…。



携帯を取り出し、マンションのオーナーにかける。


初期設定のままの呼び出し音。


2コールで出たオーナーにひとこと。



「仁の奴、女連れてきた」


『了解しました。仁がですか。楽しみですね〜。…いつからになさいますか?』


「明日からでも、使えるように頼むわ」


『かしこまりました。では』



仁と、希ちゃんの、最高のクリスマスプレゼントになるといいな。



翌日、12月26日。

天気は快晴。



目の前には、朝一の電話で呼び出してやった仁カップルと…



「ここ、クリスマスプレゼント。はい、鍵」




オールセキュリティシステムマンション、Before LIFE。



口をあんぐり開けてる、2人に声を掛ける。


「ここの最上階だから、自由に使っていいわ。なにかあったら、連絡するのよ?じゃ、楽しんで」


くるっ、と回って家への道を進むあたしの背中に、2人の大声が届いた。



「「千秋さん、ありがとうございます!俺ら(私ら)は結婚しますから!!」



ばーか。
叫ばれるこっちが恥ずかしいっての!


結婚式は呼びなさい。そう呟いてBefore LIFEを後にした。




仁が引っ越して、早一ヶ月。


とくに何も変わらない平穏な日常。
変わったことといえば、あたしが希って呼ぶようになったことぐらい。

仁と希は、週に一度は家にご飯を食べに来てくれる。


ほんと、娘ができた気分で、嬉しい限り。



今日は、ある用事で駅前に来た。


平日だっていうのに、相変わらずの賑わいだ。


人混みが苦手なあたしとしては、すぐさま帰りたい衝動にかられる。




用事は済んだし、後は帰るだけ。


とは、思ったものの…



やけに人が多すぎる。

と!く!に!ギャルのお姉様方と、不良のお兄様方。


群がってると、邪魔なのよね。本当に。


立ち止まってため息をついてると、
誰かが、あたしの方にぶつかった。


持っていた鞄を誤って肩から落としてしまった。


中には大事な書類が入ってるのに…。

見られたりして、
めんどくさいことにならないといいけど。



書類を拾おうと、手を延ばすも…。

間に合わなかった。



相手は、その書類を見て、固まる。



周りにいた、大柄な仲間たちが、「どうした?」と問いかけるも、

反応なし。



まさか、龍神会の書類…?


まさかね〜、そんなことあるわけ。



「なあ、お前さ、なんでこんなの持ってんだ?」



はあ…やっぱか…。



あたしが落とした書類は、龍神会という暴力団についてのもの。


拾った相手は、龍神会の…幹部だろう。

龍神会の幹部は、左手首にプラチナのブレスレットを着けている。



もっと、早く気づけばよかったわ。



ま、見られたものはしょうがない。
なんとか、誤魔化さないとね。



「ちょっと、ここじゃ話しにくいだろ」



仲間の男があたしに声をかける。



んー、確かにまずいかも。



「じゃあ、そこのファミレスでいいですか?」


「あぁ」




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