簡単に言うと、妃奈は俺が好きなんだ。


玲奈はそれが気に入らないらしく、どころか俺が妃奈を誑かしたと思っている。


断じて違うのだが…


「滝沢!
お客さん!」


クラスの男子が叫んだ。


有り難い、救いの手だ。

そう思ったのも束の間で、彼女が走ってくるのを見て俺は目を丸くした。


受験で忙しくなってからは、妃奈と会う機会も減っていた。


多分、最後に会ったのは夏休みだったと思う。


それまでは愛らしいツインテールだったのに、今日は髪を下ろして、ストレートのロングヘアになった。


服装は…何故かセーラー服だ。


多分、4月から通う中学校のものだろう。


「妃奈!
わざわざどうしたの!?
しかも何で春からの制服?」


「久しぶりに皆に会いたいなって。
制服なのは、着るものに迷って、時間なくなったから。」


周りがざわざわしている。


あれが噂の玲奈の妹だとか、確かに可愛いとか、玲奈が過保護で大変だろうなとか。


当たり前の反応だと思う。


なのに俺は、それらの声が耳障りに思えた。