俺が妃奈に初めて会ってから2年の月日が流れた。


そして、今日は高校の卒業式である。


「卒業か…
もう皆と毎日会えなくなるね。」


綾香が遠くを見て言った。


綾香は地方の国立大学に合格して、今月中に引っ越す。


「そうだよな。
俺と綾香は地方組だし。
玲奈と昴は事情が違うけどな。」


祥太郎も地方の医学部に行くから、こうやってすぐに会えるのも今日が最後だ。


「…祥太郎、地雷踏まないの。」


「え?
何で?
俺、なんか変な事言った?」


そうか、祥太郎は知らないのか…なんて暢気な事は言ってられない。


玲奈が目に怒りの炎を宿しながら、こちらを見ている。


「昴!
何であたしと同じ学校を受けて、しかも合格してるのよ!?
あたしだって受かったのよ!!」


今日はいつにも増して酷い言い草で、かつ理不尽だ。


「え?
2人とも受かったんだろう?
何がいけないわけ?」


理系の祥太郎は、3年になって俺らと違うクラスになった。


だから知らないのである。


だが、知らないというのは恐ろしい事である。


綾香は呆れと恐怖で何も言えないでいるし、玲奈は説明する気がないという顔をしている。


俺だって、今この話を自分でする気はなかった。


「言いたくないならいいけどよ。
…そういえばさ、妃奈ちゃんって元気にしてるの?」


…この流れで言ってしまったか。


「元気よ。
今日も来てるから、後で会えるけど!」


祥太郎は首を傾げた。


妃奈の話をしても玲奈が機嫌を直さない事を疑問に思ったのだろう。


だが仕方ない、玲奈の怒りの原因は俺と妃奈なんだから。