スポーツドリンクやタオル、クッキーまで、たくさんの女子が群がって渡そうとしている。
なんだ? これはサイン会かよっ!
って思わず心の中で突っ込みを入れなきゃやってられない有様なんだ。
「糸井はいつも、幼馴染に厳しいなぁ。アイツはかっこいいからしょうがないんだよ」
神谷くんもアイツを見ながら、笑顔を見せる。
アイツはといえば彼女たちになんて目もくれず、ベンチからとったタオルで汗を拭っている。
無関心そうな切れ長の目はいつもなにを見ているのかわからなくて、あんなに献身的な彼女たちにも平気でこんなことを言う。
「邪魔なんだけど」
無愛想で最低なアイツ。だけど、彼女たちもおかしいんだ。
「キャー! 蓮くーん」
更に黄色い声がわく。
あの、冷たい感じがたまらないとか言うんだ。