私は神谷くんにタオルを渡しながら、彼の顔を見上げて微笑みかけた。
「糸井、ありがとう。でも、アイツには勝てないな。俺はまだまだだ」
だけど神谷くんは、タオルを頭にかぶりながら照れくさそうにはにかんで言う。
私より、20センチ以上身長が高い神谷くんは穏やかに私を見下ろしていた。
顔の輪郭はシャープで、鼻すじも綺麗に通っている。
二重の目はいつだって優しげだ。
首筋につたう汗をなにげなく拭う彼は、なんだかモデル並みにかっこいい。
アイツに負けないくらいかっこいいのに、アイツだけがアイドル扱いを受けているのはなぜだろう……。
「そんなことないよ。アイツの方こそまだまだダメ。神谷くんと違ってチームプレーがなってないのよ! それにあのザマはなに!? バスケ部にアイドルはいらん!」
私は思いきりアイツを睨んで言い放った。
試合後のアイツはいつものように女子の人だかりの中にいる。