夏休みの蒸し暑い体育館の中、バスケ部の全体練習が終わった後。


あたしは、一人の部員の個人練習に付き合っていた。


彼がスリーポイントの位置からシュートして、ゴール付近にいるあたしがボールを拾って、彼に渡す。




「すごいなぁ、水沢くんは......。
あたしなんて、近い場所からでもゴールに入らないよ」



彼は、一つ年下のあたしの彼氏。

水沢くんのフォームはお手本みたいにすごく綺麗で、バスケットボールも同じように綺麗に円を描いてゴールまで飛んでいく。


何本もスリーポイントシュートを打って、ほとんど外れてないんじゃないかってくらいに成功率が高い。

スリーポイントってけっこうゴールから遠いのに。


あたしだったらスリーポイントはもちろん、近くからでも入らない。

入らないというか、届かない。


今もパスするだけでも、水沢くんまで一回地面にボールがついてからじゃないと届かない。