鍵が見つかる前に孝太郎が帰ってきて、
この日は諦めることにした。


孝太郎とベットに入って、
寝たふりをする。

私はずっと前から疑問に思っていることがあった。

孝太郎は、これ程までに私に執着するのに
絶対にと言っていいほど体の関係を求めようとしない。



理由は分からないけど、
きっと何かあるのだろう。


いつもの様に夜中に出て行く孝太郎。

引き出しは開かない。


過去を知るのは怖い。
孝太郎のこと、私は何も知らない。

家族構成とか、
何で県外受験したかとか…。


何も知らないまま付き合ってていいの?

本当の彼を知らないままで。

孝太郎、お願いだから早く帰ってきて。










次の日、私は真紀に誘われて買い物にきていた。

最近の孝太郎は、私が男子と話してても
その男子に怪我を負わせたり、
私を傷つけたりもしなくなった。


「ねぇ、夢葉。天野くんってさ、夢葉にゾッコンだよね」

「えー、そう?」

「うん、なんか逆に怖いよねぇ。異常って言うか…」


ー異常ー


孝太郎が?


異常?


孝太郎は…


「異常じゃないっ…」


叫んでいた。


「分かったから怒鳴らないでよ。
夢葉最近おかしいよ?」


真紀の言葉を聞いてやっと我に返った。

「ごめん」

「いや、謝らなくてもいいけどさ〜」

真紀は笑って許してくれた。


あ、そういえばと言って、真紀が不思議そうに言った。

「最近野良犬とか野良猫見ないね。
前はいっぱいいたのに。」



なにか言いかけて、着信音に遮られた。


「もしもし…孝太郎が!?
…わかりました」


「え、どうしたの夢…」
「ごめん先帰る!」


走っていた。

ーー孝太郎がー