「社内で嫌がらせにあってるんですよ、彼女。」


その謎解きをしてくれたのが伊島と菊池だった。



わざわざ2人が遠く離れた俺の所に来たのには、訳があった。


「嫌がらせ?」


首を捻る。
詩織は温厚な性格だ。
争いを好まないし、恨み辛みを自分の中で昇華してしまうタイプだ。


「俺は見たわけじゃないんです。
瑞季が気が付いて。
問い詰めたら、今年に入ってから嫌がらせがエスカレートしたらしいんです。」


せっかくだから、と近くのショッピングモールに4人で出掛け、菊池が詩織を連れて店に入ったタイミングで伊島が話し始めた。


「婚約指輪。あれも奪われたらしいです。しかも目の前で捨てられたって…。ネックレスもちぎられたって、瑞季に泣きながら話したそうです。

やってるのは…すみません、言葉が悪いかもしれないですけど…」

「俺が過去に付き合ったことがある女たち、か。」


伊島は黙ったまま頷いた。


「最初はなんでもないって言ってたみたいです。
でも、瑞季が突っ込んで聞いていくと泣きながら話してくれたらししくて。


辛いって、言ってたそうです。

でも、あなたの事を好きだから我慢するしかないんだって…。」



ムカつくよりも先に、自分の不甲斐なさに腹が立った。


何を考えてたんだろう。

詩織の何を見ていたんだろう。


俺のやってきたことなのに、全てが詩織に跳ね返る。


俺の側にいることで、彼女が深く傷付くなんて。


「一応、瑞季が相手に訴える趣旨のことを明言したら、ピタッと止まったらしいんですが…」


悔しそうに俯く伊島。


菊池が気付かなければどうなってた?


どうするべきなんだろう、俺は。