ビルの裏にまわると、小さめな黒い車が止めてあった。

埃をめいっぱいかぶり、さらに雨の跡までクッキリだ。

ご丁寧に鳥のフンまでつけられている。

これはあんまりじゃないの?

とマリアは内心思ったが、もはや言ってもどうしようもないので、口にはしなかった。

「乗れよ」

ウィリアムがいたずらっぽい顔で助手席のドアを開けた。

2シートの車だった。

マリアは、座席の埃を払って、無言で乗りこむ。

ウィリアムは慣れているようで、そのまま乗った。