* * * * *
「咲希」
放課後の図書室、窓際の机。
いつのまにか眠ってしまっていた私の名前を、彼が呼んだ。
「‥ん、あれ?私‥」
「おはよう。そろそろ帰ろう。」
「‥?」
寝ぼけながら何気なく外に目をやると、空はもう薄暗くなっていた。
「‥‥! もしかして、部活終わってからずっと待っててくれてたの?
すぐ起こしてくれてよかったのに」
「だって、よだれ垂らして気持ちよさそうに寝てんだもん。 起こしずらいでしょ」
からかうように彼は言う。
「っ!うそ、やだっ‥」
「ははっ嘘だよ。
でも本当に気持ちよさそうだったし」
彼の手が、私の頭をくしゃっとなでた。
「ほら、はやく帰ろう」
差し出されたその手を
私はそっととる。