「あ、あの、遊佐……」

「ん?」

「……卒業パーティーの時間、迫ってます」

うん、あと10分ぐらいでここでないと間に合わない。

なんか、いっぱい喋ってたからか、気づけば時間が全然ない。

「うん」

いやいやいや、“うん”じゃなくて……!

遊佐はギュッとさらに強く抱きしめて、あたしの首筋に顔を埋めて小さく呟いた。

「もー少し……。もう少しだけ、このままでいさせて」

その声が、あまりにも甘くて、あたしは反射的に「うん」と返事をしてしまった。

それに……、あたしも、まだこのままでいたいなって、思ってしまったから。

あたしは、遊佐に体を預けて、そっと目を閉じた。