「沙夜、ゴメン!担任の話が長くてさぁー」
美佐が部活に向かって少ししてから、梨香がやってきた。
大橋梨香(オオハシリカ)
この子もあたしの親友で、今はあたしと同じ帰宅部。
「いいよ。さっきまで美佐と話してた」
「帰ろっか!」
「うん」
_ ドンッ _
そう言って立ち上がると、後ろから走ってきた誰かにぶつかった。
「・・・ったぁ」
「・・いってぇ。悪い、大丈夫?」
声のするほうに顔を上げると、同じクラスの汐見翔(シオミカケル)が肩を抑えながら立っていた。
「ゴメン、平気」
「あッ!!」
あたしが立ち上がると、汐見が急に大きな声を出した。
「な、なに!?」
「・・それ」
汐見の指差すほうを見ると、あたしがいつも使っている鏡がこなごなに割れていた。
ぶつかった拍子に、落としてしまったのだろう。
「あぁ~・・気に入ってたのに」
黒い背景にドクロの模様が入った鏡。
市販のものに自分でラインストーンを貼ったりして作った力作だった。
「マヂごめん!!絶対弁償すっから!!」
それだけ言うと、汐見は靴を履き替えて走っていった。