「ねぇねぇ、沙夜は好きな人とかいないのぉ??」


いつから“好きな人”の話題になったのか、半ば上の空で話しを聞いていたあたしに、イキナリ話しをふってきたのは白石美鈴(シライシミスズ)。

去年まで保健室登校だったけど、どうゆう心境の変化か、2年になってからは教室に来ている。

ブリっ子というか、自意識過剰というか・・
ハッキリ言って、女子にも男子にも好かれるタイプではない。

もちろんあたしも、好きではない。

けど、どうゆうワケか先生うけがよく、やけにちやほやされているため、仲良くしておかないと内申なんかが下がるんだろう。

それに、“誰と誰が付き合っている”なんて情報には人一倍敏感だ。



「いないよ、そんなの」

「そーなんだぁ・・できたら絶対に教えてね??沙夜!!」


美鈴はそう言って、にっこり笑った。


ダメだ・・
ウザイ。


「うん、まぁ・・」

「やったぁ!!約束!!」


そう言って、今度はあたしの手をとると、右手の小指をムリヤリ自分の小指とからませた。


そんな美鈴を見て、ため息をつく。



高舘沙夜(タカダテサヤ)

この春、中学二年生になった。


誰かと付き合ったこともなければ、告白されたこともない。

告白したことだってないし、人を好きになった記憶すらない。



別に恋なんてしなくていい。

ウワサを広められて、恥ずかしい思いをして、終わってしまう恋なんて。




恋なんて・・・




このときは、本気で、そう思っていたんだ。