1年1組1番 藍田章吾(あいだしょうご)
1年1組2番 市谷(いちたに)
名前は知らない。
俺たちは、入学当初出席番号の関係で席が前後だった。
入学初日、プリントを配る際に後ろを振り返った俺は絶句した。
胸まである少し茶色に近い黒の長い髪。
それはいい。
ここからが問題だ。
その髪は前をおでこだけじゃなく目の半分まで覆ってる。
しかも、分厚い銀縁のめがね。
本当の目の形やおおきさなんて、わかるもんか。
とにかくもっさりしてて。
しかも、制服もちゃんと規定守ってきてるの、あいつ以外見たことない。
女子は足見せてなんぼだろ。
なのに、ひざ下までスカートで隠して。
土俵にもあがれてないって、まさにこのこと。
そして、あいつはいっつもぼっち。
てかまともに声すら聞いたことない。
だって、しゃべってるの見たことないもん。
そこで、俺が名づけた。
『ぼちたにさん』
本人を前にそう呼んでも、あいつは何も言わない。
返事もしないし、拒みもしない。
マジ暗い奴。
ありえねえ。
あんなのが現代にまだいたなんて。
漫画の世界だけにしといてくれよ。