「愛樹、手つなご!」
「無理です。」
「なんで?恋人なのに。」
「・・・心臓が持たないもん。」
真っ赤な顔のままそう言ってちらっと俺を見る茶色の瞳。
俺の理性なんて、昨日から全く役に立たないみたいで、
そのまま手を引いて路地裏に愛樹を連れ込んだ。
「ちょっと、なに?」
建物の外壁との間に愛樹を閉じ込めて、そっと眼鏡をとる。
「・・・ねえ。」
「な、に・・・?」
「なんでそんな可愛いの?」
「は?」
「俺のこと殺す気?」
絶対、いつか俺死んじゃうわ。
「意味がわかりません。」
「うん。じゃあ、キスしよっか。」
「それこそ意味がわからない。
もう、藍田くん。バカなこと言ってないで、学校いこ?遅刻しちゃうよ。」
そう言って俺の腕の中から逃げようとするけど、そうはいかない。
引き留めて、もう一度閉じ込める。
「ほーら、また藍田くんに戻ってる。」
「しょ、章吾くん・・・。」
なんで名前呼ぶだけでそんな赤くなるんだよ・・・
そんな愛樹に、こっちまで赤面させられる。
「どうしたの?」
赤い顔を見られまいと、無意識に顔を下げたら愛樹が心配してくれる。
「愛樹のせい。」
顔を上げて、至近距離で見つめる。
可愛いな~
こんなかわいいのが、俺の彼女とか、絶対夢だ・・・。
「章吾くん?」
「もっかい呼んで。」
「章吾、くん・・・。」
「もう一度。」
「章吾く・・・ン!!!」
愛樹の唇は甘い。
やわらかくて、あったかくて、幸せになれる。
ずっと、俺だけのものでいて。
キスをしながら、願う。
やっと手に入れた、俺の宝物。
大切な大切な・・・俺だけの君。
ぼちたにさん
いつもぼっちな彼女をからかって、俺がつけた。
おもしろがるためだけの対象だった。
そんな君に、俺が恋をするなんて・・・
あの時の俺に教えてやりたい。
とくに大事なものもなく、適当に日々を送っていた自分に。
これから、すごく苦しいこと、辛いことがあるぞ。
でも、それと同じくらい楽しくて、うれしい。
そこから逃げるな。最後まで向き合え。
そうしたらきっと、かけがえのないものを手にできる。
大切な、この上ない幸せを、感じられるから。
「愛樹、愛してるよ・・・。」
顔を赤くしながらも、俺を見つめて微笑む茶色い瞳。
これからも、ずっと君の隣は俺のもの。
ぼっちな彼女(キミ)に、溺愛中。
_END_
はじめまして。
空桜、と書いて、くおん、と読みます。
初めて小説を完結させることができました。
この作品は、もう一つ書いている作品の息抜き程度に進める予定で書き始めたものです。
でも、大判狂わせとはこのこと。こちらが先に完結してしまうとは…
人気者×ぼっち というまあ、ありきたりなストーリーとなっておりますが、少しでもお楽しみいただければ幸いでございます。
続編も書きたいです。少ししか登場できなかった人物たちがいるので、その子たちの出番を増やしたいです。
お時間があればafter storyも付け加えたので、読んでいただけると嬉しいです。次頁から!
お気軽に感想など書いていただけると励みになります。よろしくお願いします。
では、ここまで読んでくださりありがとうございました。
またどこかでお会いできる日を楽しみしています。
_空桜。
『付き合うことになった。』
昨日のほぼ深夜に一言だけきたライン。
やっとかよ・・・。
あいつが、恋愛に対してここまでめんどくさい奴だと知ったのは最近。
高校生にもなって初恋しやがった章吾は、今まで散々女の子にひどいことしてきたくせに、それを棚に上げてちょっとしたことで落ち込んで俺に相談してきていた。
正直、早く告れよ、という思いしかなくて、最近ではあきれてなんも言ってなかったけど。
昨日、ぼちたにさんが休んでいて、章吾もなんかそれを気にしてて
しかも、昼休みに和樹まで来て・・・・
なんとなく"なにか"はあったんだろうなって思ってたけど、その"なにか"が、章吾にとっては前へ踏み出すきっかけになったんだったら、まあよかったんじゃねーの?って思ってる。
それを事細かく詮索するほど、俺も暇じゃないし、人の色恋にそこまで興味もないから、もういいけど。
今日、会ったら、『おめでとー』くらい言ってやるかー。
「玲二~。おっはよ~!」
そう言って、後ろから抱き着いてくるのはたぶん彼女の一人である美奈子。
たぶんってつけたのは、俺にもよくわかんないから。
俺的には、エッチまでしちゃったらもう彼女なんじゃん?って思うし、好きだからそういうことするんだし。
でも、友達の中にはそれをセフレっていう奴もいて。
実際、美奈子とも別に「付き合おう」とか、具体的な言葉は交わされていない。
俺が個人的にセフレって言葉があんまり好きじゃないのもあるかも。
それなら彼女がいい。
「みなちゃん、おはよう!」
振り返っておはようのキスをする。
だって普通に好きだし。可愛いし。
美奈子は上機嫌で俺の腕に絡みついて、えへっと笑う。
女の子の体以上にやわらかいものってないんじゃない?
俺は、女の子大好き。可愛いし、やわらかいし、一緒にいると幸せだもん。
・・・でも、唯一
この世で出会った女の子の中で、幸せにはなれそうにないなって思ってた。
それが、ぼちたにさん。
出会って、一目見た瞬間「ないな。」の一言で終わった。
俺の中の彼女の印象はそんなの。
そんな奴にあの章吾がべた惚れしてて、今でも若干信じがたい。
章吾の中でなにが刺さったのか全くわかんねえ。
「玲二なに考えてんの~?顔怖いぞ!」
笑顔でかわいらしく首をかしげて俺をのぞき込んでくる。
「別に~なんでもない!」
ほら、女の子ってこういうものでしょ?
きゃぴきゃぴ騒いで、笑って、一緒にいて楽しい。
ぼちたにさんには、その要素が一つもないよね。
やっぱり、わかんねーな。別にわかりたい、とも思わないけど。
けど、ちょっとした興味はある。
だって、あの誰にもなびかなかった章吾が惚れるって・・・どこに?
ただ章吾がB線すぎるだけって可能性もあるかな。
そうだとしたら笑えるし・・・
そんな考えがあったから、朝、教室に入り、まっすぐに章吾の席へ向かった。
ぼちたにも、章吾も、もうお互いの席についていて
二人ともスマホを見ている。
ぼちたには、あのながーい髪のせいで全く表情は見えないけど
章吾の方は誰がどう見ても上機嫌。
スマホでなにか打ちながらニヤつく頬を隠そうともしていない。
こんなに章吾がにやけていることなんて今までなかったから、クラスの奴らも若干気にしているけど、当の本人はスマホに夢中。
「きもちわりい顔してるぞ~?章吾。」
章吾の向いにしゃがみこんで、机に両肘をついた。
「おはよう、玲二。」
こんなににこやかなこいつを、結構な時間一緒にいるけど、俺は初めて見た。
しかも、俺が「気持ち悪い」ってはっきり言ってるってのに、反論もしてこない。
ますます気持ちわりい。
「早速、昨日できた彼女とLINE?」
「まーね。正確には昨日じゃないけど。」
俺に一瞬目を向けると、またスマホへ。
昨日じゃない?
「え?どゆこと?」
「こっちの話。てか、マジ可愛すぎて困ってる。」
こいつ・・・のろけるタイプかよ。
あと、こっちの話ってなんだよ。まあ、そこまで問い詰めるのめんどくさいし、いっか。
前までの章吾とは到底別人。
マジで、俺はこんな奴知らない・・・
俺だって、こんなにあからさまに人前で醜態は晒さないぞ。
「まあ、よかったじゃん?
てか、やっと?って感じけどなーこっちは。」
「うっせーよ。」
とか言いながらも、やっぱり頬はゆるみっぱなし。
今日なら、こいつ、俺がなにやっても許してくれそう。
「てか、紹介してよ。」
「は?」
俺の言葉に、一瞬で真顔になる。
「変な意味じゃねーぞ?」
なにか逆鱗に触れた気がして慌てて否定する。
「おまえの彼女を、この、いろいろ手助けしてやった親友様にもきっちり紹介しろってこと。」
「ええ?」
あからさまに嫌そう。
「紹介するもなにも、知ってんじゃん。つか、そこにいるし。」
目だけでぼちたにを見る章吾。
「いや、そういうことじゃなくてね。」