「その気持ちがなんていうものなのかなんて、全然わからなかった。」

愛樹がそこで話を切って、顔を俯かせる。

後ろからのぞくうなじが少し赤く染まることに、期待しつつ、俺は続きを待った。

「でも、あの日、駅で藍田くんと菜月さんを見て、昨日、菜月さんから藍田くんとの関係を聞かされて

自分でも抑えきれないくらい動揺して、傷ついて、嫌だ!って思いました。

藍田くんの隣は私じゃないとやだって思って、でも菜月さんがいて、それが苦しくて、涙がとまらなくて。」

愛樹の言葉を全て包み込むように、後ろから愛樹を抱きしめた。

その姿が愛しくて、たまらない。


「泣かせてごめん。傷つけてごめん。伝えるのが、遅すぎてごめん。」

愛樹は、フルフルと頭をふって、首に回った俺の腕にそっと手を添えた。

「私も、藍田くんが好き。」

・・・・っ

どくん、と胸がなる。

やっと、聞けた。

好きな女の「すき」って言葉が、こんなに破壊力があるなんて。

「私こそ、気づくのが遅すぎてごめんなさい。

できるなら、ずっと藍田くんの隣にいたい!」

「愛樹・・・!!」

おもわずぎゅっと力をこめる。

嬉しくて、目一杯強く。

「く、苦しいよ・・・藍田くん・・・。」

モゾモゾして、そう言うので慌てて力を緩めた。

「わりい!」

一言謝ってから、

やっぱり触れていたいから、今度はそっと優しく抱きしめ直す。

俺の思いが届いた・・・・・

彼女が前で少し笑ったのが分かった。