俺は今入ったばかりなのに、出て行くために

また扉に手をかけた。


「藍田くん?」

・・・・・っ!?


固まった。

本当に、体が硬直した。


昨日聞いた、外見に似合わない、あの声。

俺の名前を呼んでいる。


なんで?

なんで、俺ってわかったんだ?

今、後ろにいんのか?

そりゃ、いるか。

すぐ後ろで、声したし。


俺は、とりあえず振り返る。

そこには、いつもと変わらない、暗くて地味なぼちたにがいた。

やっぱりもさい。

やっぱり、ありえない。


「なんで?」

そう聞いてみると、意味がわからないようで、首をかしげる。

「なんで、その、入り口まで来たの?」

もう帰る、なんてことはないだろうし。

第一、荷物持ってないし。

「扉を開ける、音がしたから。」

「いや、でも・・・・。」

それだけで、音する毎にこないよな?

「藍田くんのような気がしたの。」