母親が今日はいつも以上に杏を急かしている。


まぁ、これも無理はないだろう。


なんせ一人娘の入学式なのだから。


「杏、式が終わったら写真撮らせてね。パパにも見せてあげたいから。」


そう言う母親の目はどこか懐かしそうだった。


杏は何も話さないままに朝食を食べ終えると荷物を手に取り一足先に学校へ向かったのだった。


電車で2駅の学校


地元ではかなりの難関校で有名だった。


それでも杏は難なく学年トップで入学した。


校門に近づく頃には同じように真新しい制服に身を包んだ同い年に見える子もちらほら。


杏はただそれをぼーっと見ながら歩いて行った。