「募金お願いします」
「美容院ですお願いしまーす」
休日の昼はどうしてこうもうっとおしいんだか。
平日にすれば良かったよ。でも、今日は用事があった。
「ねぇねぇ見てよ、あの人。めちゃ可愛くない!?でも明らか整形顔じゃん?」
女子高生が私の方を見て喋ってる。
うるせーばか。悔しかったら整形代貯めて整形しろブス。キッと睨むとよそよそしく女子高生たちは視線を逸らした。
駅前の喫煙ブースまで着いたはいいけど人いっぱい。だから嫌だ、休日は。
タバコに火をつけて一服すると20代後半くらいの今時肌の浅黒い男に声をかけられた。
「お姉さん、可愛いね!
今ヒマ?俺すっごいヒマしてて…こんな可愛い子見たら声をかけずにいられないじゃん?遊ばない?おごるよ!」
タバコに火をつけたばっかりだと言うのに、うっとおしい。
「私用事あるんだ。」
いや用事なくても遊ばないけどね。
「俺も付き合うよ」
だるくなったから、シカトしてスマホ片手に持って電話のフリ。
「もしもし?もうそろそろ行くから。」
そしてタバコの火を消し喫煙ブースを去った。
私の用事はこれからなの。
「いらっしゃいませー」
細々とところ狭しに並んでいる雑貨や美容品。
「Happy Birthday 」
プレートを持っているぬいぐるみを手に取った。こんなものじゃ、駄目だ。
世界に1つだけのものではなくては駄目だ。
何がいいのだろう。
すると視界にハンドメイドキットコーナーが目に入った。
私の柄では無いが、大丈夫だろうか。
というより、裁縫も出来ないし…。
「初めてでもカンタン、あみぐるみ」
さすがにこれは小学生向きだよな…と思って店の外に出た。
ショッピングモール街。
特設で、絵描きが似顔絵描きます。
って、やってた。
似顔絵ねぇ…いや、いいかも。ありかも。
「すみません… dearsの夏希の似顔絵描いてもらえませんか…」
絵描きはきょとんとした顔で、
はい?と言ったので、
スマホを差し出してこの人です、と言う。
「あのー、芸能人の似顔絵ですね。スマホの画像だとちょっと描きづらいなぁ」
「グッズのカードなら、ありますけど。」
「…分かりました、描きます。」
絵描きも仕事だもんね。でもさ、普通こういうのってカップルとか子供が描いてもらうんだろうね。私みたいなのはいないのかな。
そう、もうすぐなつきの誕生日だから。
「あの…あとついでに、Happy Birthday 夏希2.10って入れてもらえませんか」
「はい」
私は、夏希が好きだ。
夏希はインディーズのダンスユニットの1人。
でも、知ってる人は知ってるし、ダンスイベントでもファンは結構いる。
笑うとたれ目で涙袋がぷくっとした優しい顔。
今以上に人気は出て欲しくない。
インディーズならではの物販の交流。それが楽しみなの。
誕生日プレゼントは、
似顔絵と…こないだブログで欲しがってたスニーカーはきっと、誰かと被る。
もっと、私って印象付ける何か。
直接電話番号を渡したことは何度もあった。でも夏希は応じてくれなかった。
私は、気付いた。私の顔が気に入らないんだって。だから、私はフリーターを辞め、風俗を始めてお金を貯めて、整形をした。
おかげで、街を歩けば美人だと言われるようになった。
今も風俗を続ける理由は夏希に近づきたいからだ。夏希のイベントは全部行くし、夏希の欲しい物は買ってあげる。
顔、声、仕草、ダンス、笑顔、全て好き。
どうして今横に私がいないの?
可愛くなった私なら夏希と釣り合うよ。
「お客さん、出来ました!どうですか?」
絵描きがおそるおそるこちらを見た。
絵の夏希はまぁまぁ特徴を捉えていた。
「ありがとう!あと、"byれいな "って付け足して下さい。」
私は絵を受けとると800円を渡して歩き出した。
私と夏希の出逢いは、突然。
電車で隣に偶然いた。なんて綺麗な人なんだろうと思った。そして、降りる時になつきのポケットから財布が落ちた。
すぐ拾って、夏希を呼び止めた。
「あの…財布落としましたよ。」
後ろ姿茶髪が揺れた
びっくりした顔で
振り向いた夏希の顔。
可愛くてまだあどけない。
「え!!うせやん!?
お姉さんじゃなかったら絶対取られてました!!助かった…。」
見た目とギャップで元気な関西弁。
関西の人なんだ…。
しかし本当に綺麗な顔。優しい目。
あまりにタイプで話しかけてしまった。
「なっ…
なんか芸能人みたいですね」
夏希は鞄をごそごそさせると、何やら紙切れを差し出してきた。
「お礼と言ったらしょうもないかもしれへんけど、俺ダンスユニットやってるから、良かったら友達誘って遊び来てや!
一応小さい事務所やけどインディーズでやっててな…メジャーも視野に入れて頑張ってるんやけどね。今日も練習やからもうそろそろ行かな。ほんまにありがとう。」
私は2枚のチケットを持ったままぼーっと立っていた。とても格好良かった。
でも、名前も聞けなかった。あるのはこのチケットだけ…。
もう、行くしか無いと思った。
私たちの出逢いは、必然とも呼べる偶然で、きっと世界中の中で夏希が私を選んでくれたように感じた。
私が夏希と出逢って初めてのbirthday、すごく楽しみだよ。
10月の私のbirthdayは、ちょうど整形のお休み期間のダウンタイムで会えなかったけど、出来る女っていうのは自分より彼の事を考えられる献身的な女のことだから、私は他のファンと違う。
夏希を祝えればいい。私なんてどうでもいい。だから、夏希のbirthday楽しみにしていたよ。私の手帳に誕生日のシール。
2月10日のイベント、本当に楽しみ。
夏希は何が欲しいんだろう?と考えながら、ショッピングモールを点々とする。夏希が好きなニューエラの小物をぱっぱっとレジに。
着てもらいたい服。最新I Pad。気付いたら軽く会計は15万を越えてた。別にまだお金はあるけど、みづきが持って帰るのダルいだろうから辞めとく。
ずっしりした紙袋を持ち、肩が重い。
息を吐くと白い。外は冬。
あけましておめでとうございます という文字が並んでいる。今日は1月10日。
あと、1ヶ月。あ…。
メッセージカード 添えようかな…。
適当なカードと可愛いペンを買い、帰宅すると作業に取りかかった。
happy birthday toなつき
誰よりも 愛してます
今年も よろしくね
20サイ おめでとう
れいな
「美容院ですお願いしまーす」
休日の昼はどうしてこうもうっとおしいんだか。
平日にすれば良かったよ。でも、今日は用事があった。
「ねぇねぇ見てよ、あの人。めちゃ可愛くない!?でも明らか整形顔じゃん?」
女子高生が私の方を見て喋ってる。
うるせーばか。悔しかったら整形代貯めて整形しろブス。キッと睨むとよそよそしく女子高生たちは視線を逸らした。
駅前の喫煙ブースまで着いたはいいけど人いっぱい。だから嫌だ、休日は。
タバコに火をつけて一服すると20代後半くらいの今時肌の浅黒い男に声をかけられた。
「お姉さん、可愛いね!
今ヒマ?俺すっごいヒマしてて…こんな可愛い子見たら声をかけずにいられないじゃん?遊ばない?おごるよ!」
タバコに火をつけたばっかりだと言うのに、うっとおしい。
「私用事あるんだ。」
いや用事なくても遊ばないけどね。
「俺も付き合うよ」
だるくなったから、シカトしてスマホ片手に持って電話のフリ。
「もしもし?もうそろそろ行くから。」
そしてタバコの火を消し喫煙ブースを去った。
私の用事はこれからなの。
「いらっしゃいませー」
細々とところ狭しに並んでいる雑貨や美容品。
「Happy Birthday 」
プレートを持っているぬいぐるみを手に取った。こんなものじゃ、駄目だ。
世界に1つだけのものではなくては駄目だ。
何がいいのだろう。
すると視界にハンドメイドキットコーナーが目に入った。
私の柄では無いが、大丈夫だろうか。
というより、裁縫も出来ないし…。
「初めてでもカンタン、あみぐるみ」
さすがにこれは小学生向きだよな…と思って店の外に出た。
ショッピングモール街。
特設で、絵描きが似顔絵描きます。
って、やってた。
似顔絵ねぇ…いや、いいかも。ありかも。
「すみません… dearsの夏希の似顔絵描いてもらえませんか…」
絵描きはきょとんとした顔で、
はい?と言ったので、
スマホを差し出してこの人です、と言う。
「あのー、芸能人の似顔絵ですね。スマホの画像だとちょっと描きづらいなぁ」
「グッズのカードなら、ありますけど。」
「…分かりました、描きます。」
絵描きも仕事だもんね。でもさ、普通こういうのってカップルとか子供が描いてもらうんだろうね。私みたいなのはいないのかな。
そう、もうすぐなつきの誕生日だから。
「あの…あとついでに、Happy Birthday 夏希2.10って入れてもらえませんか」
「はい」
私は、夏希が好きだ。
夏希はインディーズのダンスユニットの1人。
でも、知ってる人は知ってるし、ダンスイベントでもファンは結構いる。
笑うとたれ目で涙袋がぷくっとした優しい顔。
今以上に人気は出て欲しくない。
インディーズならではの物販の交流。それが楽しみなの。
誕生日プレゼントは、
似顔絵と…こないだブログで欲しがってたスニーカーはきっと、誰かと被る。
もっと、私って印象付ける何か。
直接電話番号を渡したことは何度もあった。でも夏希は応じてくれなかった。
私は、気付いた。私の顔が気に入らないんだって。だから、私はフリーターを辞め、風俗を始めてお金を貯めて、整形をした。
おかげで、街を歩けば美人だと言われるようになった。
今も風俗を続ける理由は夏希に近づきたいからだ。夏希のイベントは全部行くし、夏希の欲しい物は買ってあげる。
顔、声、仕草、ダンス、笑顔、全て好き。
どうして今横に私がいないの?
可愛くなった私なら夏希と釣り合うよ。
「お客さん、出来ました!どうですか?」
絵描きがおそるおそるこちらを見た。
絵の夏希はまぁまぁ特徴を捉えていた。
「ありがとう!あと、"byれいな "って付け足して下さい。」
私は絵を受けとると800円を渡して歩き出した。
私と夏希の出逢いは、突然。
電車で隣に偶然いた。なんて綺麗な人なんだろうと思った。そして、降りる時になつきのポケットから財布が落ちた。
すぐ拾って、夏希を呼び止めた。
「あの…財布落としましたよ。」
後ろ姿茶髪が揺れた
びっくりした顔で
振り向いた夏希の顔。
可愛くてまだあどけない。
「え!!うせやん!?
お姉さんじゃなかったら絶対取られてました!!助かった…。」
見た目とギャップで元気な関西弁。
関西の人なんだ…。
しかし本当に綺麗な顔。優しい目。
あまりにタイプで話しかけてしまった。
「なっ…
なんか芸能人みたいですね」
夏希は鞄をごそごそさせると、何やら紙切れを差し出してきた。
「お礼と言ったらしょうもないかもしれへんけど、俺ダンスユニットやってるから、良かったら友達誘って遊び来てや!
一応小さい事務所やけどインディーズでやっててな…メジャーも視野に入れて頑張ってるんやけどね。今日も練習やからもうそろそろ行かな。ほんまにありがとう。」
私は2枚のチケットを持ったままぼーっと立っていた。とても格好良かった。
でも、名前も聞けなかった。あるのはこのチケットだけ…。
もう、行くしか無いと思った。
私たちの出逢いは、必然とも呼べる偶然で、きっと世界中の中で夏希が私を選んでくれたように感じた。
私が夏希と出逢って初めてのbirthday、すごく楽しみだよ。
10月の私のbirthdayは、ちょうど整形のお休み期間のダウンタイムで会えなかったけど、出来る女っていうのは自分より彼の事を考えられる献身的な女のことだから、私は他のファンと違う。
夏希を祝えればいい。私なんてどうでもいい。だから、夏希のbirthday楽しみにしていたよ。私の手帳に誕生日のシール。
2月10日のイベント、本当に楽しみ。
夏希は何が欲しいんだろう?と考えながら、ショッピングモールを点々とする。夏希が好きなニューエラの小物をぱっぱっとレジに。
着てもらいたい服。最新I Pad。気付いたら軽く会計は15万を越えてた。別にまだお金はあるけど、みづきが持って帰るのダルいだろうから辞めとく。
ずっしりした紙袋を持ち、肩が重い。
息を吐くと白い。外は冬。
あけましておめでとうございます という文字が並んでいる。今日は1月10日。
あと、1ヶ月。あ…。
メッセージカード 添えようかな…。
適当なカードと可愛いペンを買い、帰宅すると作業に取りかかった。
happy birthday toなつき
誰よりも 愛してます
今年も よろしくね
20サイ おめでとう
れいな