このベルベット・パスこそが、世界でも真似の出来る選手はまずいないだろうと云われている、真野の得意技の一つであった。

真琴は思わず体を起こして、画面を凝視した。
 
同じだった。

あの天才セッターが繰り出すトスと、サッカーとバレーの違いはあったが、相手選手は惑わしても、味方選手には容易く扱えるやさしいボールであるという意味では、全くに同じだった。

やはり、こんな技は天才たちにのみ許される特別なものなのだという厳しい現実を、悲しいまでに実感させられるだけだった。

自分は絶対に真野選手にはなれない。

どんなに努力しても人間のもつ能力は違っていて、自分の限界まで力を出し切ったところで出来ることと出来ないことがある。

まざまざとそれを理解させられていくにしたがい、その中継を見ることに耐えきれなくなってテレビのチャンネルを切り換えた。