最強のセッターと呼ばれることも小さな巨人と呼ばれることもあったが、女の子にとってはあまり嬉しくない名称、化け物と呼ぶ人間も少なからずにいた。

様々な高校バレーの名門私立高校からスカウトが尋ねて来て、入学金も月謝も免除の特待生として迎えたいとの話を持って来たが、敢えて彼女は、家からそう遠く離れていない公立の高校へと進学することにした。

バレー部に入部するや否や、他の新入部員たちとは全くに扱いが違っていた。

普通の選手なら、どんなに中学校で三年間バレーに打ち込んで来たといっても、高校生とでは体力面に大きな差がでるのが当たり前の年代である。

新入部員たちの中には中学校で関東大会にまで出場した者までいたのだが、やはり高校生とくらべると相当に見劣りをしてしまう。

しかし、真琴のそれは他の新入部員たちとは桁が違っていた。

強靭な下半身に加えて、柔軟さと持久力も備えていた。

新入部員の誰よりも小さい筈の真琴が、他の部員達を遥かに凌ぐ、大きな姿に見えてくる錯覚すら覚えるような感もあった。