制服に着替えた真琴は、激しい憤りを堪える事が出来ないまま真直ぐに職員室のある一号棟校舎へと向かった。

些かも戸惑うことなく職員室の扉を真横へと引いた。

入口からやや右前方の机で、ヘッドホンを両手で押さえ付け、眉間にしわを寄せた鬼気迫るような険しい表情の中、食い入るような視線を眼前の唯一点に留めて、他の何ものをも拒絶する雰囲気を醸し出した女性教師を、真琴の視線が捉えた。

今春、広島から転任して来た先生で、入学後、初めての朝礼で紹介されていた事を、クラスで一番背が低い真琴よりも、ずっと小柄な体躯だったこともあり、何となくではあったが覚えていた。

部屋の奥へと視線を移し、目的とした人物を発見するや否や、その場所へと一直線に歩を進めた。

「先生… お話したい事があるんですけど」
「んっ、宮下じゃないか。どうした。今日は部活は休みか?」

「あの… 」

「何だ、何かあったのか?」

「バレー部の事なんですけど… 」

「言いたい事があるなら速く言え、俺も忙しいんでな」